デイヴィッド・ボウイを翻訳する(2):「反抗者ヨ、反抗セヨ」




You got your mother in a whirl 
She's not sure if you're a boy or a girl
Hey, babe, your hair's allright, hey, babe, let's go out tonight
You like me and I like it all, we like dancing and we look divine

お前のかーちゃんパニックだろ?
その格好じゃさ、かーちゃんはお前が男か女かも判りゃしないだろ?
でもお前のその髪、いいじゃん
でさ、今夜街に繰り出そうぜ
お前俺のこと好きだし、俺もそれが気に入ってるしさ
俺らどっちもダンスが好きだし、二人だとすっげー目立つぜきっと

You love bands when they play it hard
You want more and you want it fast
They put you down, they say I'm wrong
"You tacky thing!", you put them on

お前さ、ハードなプレイが好きじゃん(いや、バンドのね)
んで、いっつも、もっともっとハードに
もっともっと早くってせがむじゃん

でも奴らはお前のこと馬鹿にしてっから
あんなブサイク女と付き合ってるなんて お前なんか勘違いしてんじゃね?」 かなんか上から目線で俺に言いやがる
そんな時には お前はいつも

「だっせー奴!」

つって逆に奴らをコケにしちまうんだよな

Rebel Rebel, you've torn your dress
Rebel Rebel, your face is a mess
Rebel Rebel, how could they know?
Hot tramp, I love you so!
Don't you?

-- 反抗者ヨ、反抗セヨ --
お前ってば(デブだから)
服はビリビリ裂けちゃってるし
-- 反抗者ヨ、反抗セヨ --
顔も超ぶさいく
-- 反抗(心ニ溢レタ)者ヨ、(トコトン)反抗セヨ --
だけど(奴らにゃ判りっこねぇけどよ)
お前ってばホント
「セクシーなホームレス(宿無し)」だよな
俺、そんなお前が大好き

You've torn your dress, your face is a mess
You can't get enough but enough ain't the test

ところが雲行が怪しくなって来た
相変わらず、お前の服はズッタズタだし
顔は超ブサイクだけど
今のままじゃ満足できねえって?
おいおい、オーディションは1回で十分じゃなかったのかよ?

You've got your transmission and a live wire
You got your cue lines and a handful of ludes
You wanna be there when they can up the dudes

ある日突然
お前は(お前の名前をタイトルにしたテレビの)「冠番組」 をゲットした
超イケてる精力ゼツリン男もゲットした
決めの台詞
一握りの「ルード」*1もゲットした
今や、「ドゥード」*2撮影があると聞きゃ
飛んで現場に行きたがりやがる

*1:薬物メタカロン(methaqualone)の俗称
*2:文脈からは前述の「バンド野郎」の意か。

Said I love your dress, you're a juvenile success
Because your face is a mess
So how could they know? I said, how could they know?

俺はさ、お前の着てる服が好きだったんだよ
ところがよ、今やお前はティーンエージャーのカリスマ
それもよ、お前の顔が超ブサイクだからってだけでさ
くそ、奴らに何が判るってんだよ
そう、奴らには絶対判りっこねえんだよ

So what you wanna know Calamitys child, ch-chile, ch-ch, a where'd you wanna go?
What can I do for you? Looks like you've been there too
'Cause you've torn your dress and your face is a mess
Oo, your face is a mess, oo-oo, so how could they know?
How could they know?

お前、これ以上何が知りたいんだよ?
この厄病神のガキがよ
お前はこれからどうしたいんだよ?
俺がお前にしてやれるこたぁもう何もねぇよ
おい、そこのお前
その格好見ると、お前も似たようなことやってきたクチだろ?
ズッタズタの服で、超ブサイクなツラしやがって
そう、お前のその超ブサイクなツラ、って言ってんだよ

くそ、奴らに何が判るってんだよ
そう、奴らには絶対判りっこねえんだよ

訳詞解説: トランスミッション と ライブ・ワイア
あるいは話者の取り違えと応答可能性に関する考察

えー、皆さんは、とある有名な「誰もが知っている」曲の歌詞の本来の意味を 自分はずっと取り違えて理解していた、という経験をお持ちでないだろうか?

たとえば、よくある話では、「アニメ『巨人の星』のテーマソングの歌い出しを ずっと『重いコンダラ』だと思い込んでいたワタシ」とかいうのがありますね。

注:私の記憶が正しければ、この「コンダラ」話が最初に公的媒体に登場した のは、今から30年近く前、雑誌『週刊朝日』の『デキゴトロジー』欄ではな かったかナ、と思う。ま、どうでもいいけど。そういえば、『KONDARA』っていう Linuxディストリビューション、とっくの昔に開発が終わっちゃったんですってね、 残念。ま、関係ないけど。

「コンダラ」は、動詞の活用語尾部分プラス助詞を1つの名詞と取り違えたも のだが、ま、これは解釈者の単純な無知/無教養に起因する誤解だと言えよう(面白いけどね)。 より高度な誤解としては、たとえば、歌詞の中で語られている台詞の発話者を 取り違えていた、というものがある。この例として、私の歌詞誤解事件を以下 に紹介してみよう。

ある時、私は名曲100曲が収録された3枚組の音楽CDを聴きながら、何の気 なしに同CDに同梱されていた歌詞カードを眺めていた。そして、そこである曲 の歌詞全文とその解説を読んだ時、私はこれまでの自分の解釈が完全に間違っ ていたことを知り愕然とした。以下にその歌詞を引用する。

ぞうさん、ぞうさん
お鼻が長いのね
そうよ、母さんも長いのよ

私はこれまで、上記の詩は、親(おそらく母親)と子供(おそらく娘)が動物園に 行き、象の檻の前で子供とその親が仲良く語り合う情景を描いたものだと解釈 していた。すなわち、「お鼻が長いのね」という台詞の発話者は人間の子供で あり(←これに異論のある人はいないと思うが)、「そうよ、母さんも長いのよ」 という台詞は我が子に対して人間の親が応答したものである(「そうよ、見て ごらん、あっちにいる母さん象の鼻も長いでしょ」)、と理解していた。とこ ろが、私は知らなかったのだが、この詩には2番があったのだ。

ぞうさん、ぞうさん
誰が好きなの
あのね、母さんが好きなのよ

私はこれを読んでも、「あのね、母さんが好きなのよ」は、我が子に対して人 間の親が「そうね、きっと母さん象が好きなのよ」という意味で応答した台詞 であると解釈した。ところが、歌詞カードに添付の解説を読むと、以下のよう な驚くべきことが書いてあった。

これは人間の子供と象の子供のかわいらしい対話をテーマにした歌です。人間
の子供からの問いかけに対して、自分の鼻は大好きなお母さんと同じで長いん
だと、子供の象はちょっぴり誇らしげに答えています。

え、嘘でしょ、と私は思った。

日常生活において、象は日本語で応答しない。

いや、通常、象はいかなる言語による問いかけに対しても言語を使用した応答 を返すことはない。もし象が言語による応答を返した場合、最初の問いを発し た子供は腰を抜かしてしかるべきではないのか。この解説の「ぞうさん」解釈 はおかしいのではないか。

そこで私はある友人に、私の「ぞうさん」解釈の方が正しいのではないか?、と オソルオソル問うてみた。するとその人は、「アンタ馬鹿じゃないの」という 一言の元に私の解釈を斥けた。

その人によれば、「母さんも長いのよ」および「母さんが好きなのよ」という 台詞の発話者は明らかに「象」であり、これらは人間の子供から投げ掛けられ た質問への応答として、当の「象」自身が発話したものである、と解釈するの がフツーだと言うのだ。また別の友人は私にこう言った。私は「象は言語によ る応答を行わない」という常識に拘泥したがために、詩の本来の意味における 発話者を取り違えたのだ、と。「詩」の上では象も犬も猫も言語によって応答 可能なのだし、「詩」とは本来そういうものではないか、と。うーむ。

<<本稿未完>>

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